実際には、一度も部屋探しをした事がない人でも、インターネットで誰でも自由に最新の物件空室情報を見られるようになってから、既に10年の月日が経ちました。
でも賃貸物件の間取りについては、漠然とは理解しているものの、いまさら人に聞くこともできぬまま実際には間取りや設備について誤解をしてしまったりしていることもあるのではと思います。
たとえば、「2K」なのに「1K」より家賃が安いモノがあったりと不思議に思う方もいるのではないでしょうか?そんな状況を踏まえて、ここでは本当に基本的な間取りのご説明と、これまでの賃貸物件と間取りの変化と経緯について取り上げてご説明しています。
@2Kから2DKそして2LDKへ ファミリータイプは日本の家族の歴史そのもの
Bシングルタイプの歴史@ バブルの遺産 「1R」 と 二人のための 「1DK」>>
Cシングルタイプ編A 昭和の高度成長期を支えた東京の「下宿」暮らし >>
|間取りの表記の基本|
○Kというのは(部屋)数+キッチンの略(1K・2Kなど)
○DKというのは(部屋)数+ダイニングキッチンの略です。
○LDKというのは(部屋)数+リビングダイニングキッチンの略です。
例えば
2Kは、2つの部屋とキッチン(スペース)があります。だから2K(ダイニング無し)※標準35u前後
2DKは2つの部屋とDKで2DK。※標準40u前後
3DKは3つの部屋とDKで3DK.※標準50〜55u前後
2LDKは2つの部屋とLDKで2LDKと表記されます。※標準50u前後〜
■ 2Kから2DKそして2LDKへ ファミリータイプ間取りは日本の家族の歴史そのもの
「2DK」を探すと、
未だに洗濯機が外置きだったり、洗面所が無かったり、
風呂は古い内釜(ウチガマ)タイプだったりするのは何故?
「2DK」という間取りは実はひと昔前の物件なのです。
現在、普通に考えて、洗濯機を外に置いたり洗面台を無しに室内設計をすることはありませんが、
2DKという間取りの物件は25年前から15年位前まで(1980年代のバブル期)にファミリータイプのメイン間取りとして大量に建てられた物件が多いので、当時の基本設計の物件が多いと思います。
ですので、洗濯機が外置きタイプだったり、オール和室仕様だったりする物件が多いのです。
設備も現代的な給湯式でなく、バランス釜タイプのお風呂だったりする事も多いと思います。
しかしこれらについて、DKが比較的広め(8帖〜9帖程度)という理由で、安易に「2LDK」などと記載する会社もあって注意が必要というのは何度も記述のとおりです。
実際、不動産広告の表記が「2LDK」だったから2LDKだと思って住んでいる人も多いと思います。
そんな「2DK」物件なので
築年数の新しい「2DK」を探すと極端に少なくなるのです。
そんなちょっと古めかしい「2DK」でも、現在ではリフォームをして設備を見直してある物件も数多くありますが、昔のまま全く変更せずに当時のままの仕様で募集されている物件なども数多く、募集される家賃にも数万円の幅があります。 また、昨今の景気を反映して新築2LDKを「2DK」に変更したりする新しい「2DK」なども稀にあります。要は実際に見て見なければ分からないそれぞれの物件ナリの仕様と家賃設定となっています。
それではどうして、バブル期なのに3DKでなく2DKだったのか?
この時代(バブル期)は、土地価格・建築費・固定資産税も暴騰していて、3DKでは家賃が高くなり過ぎてしまい、2DKくらいが家賃として丁度良い需要があったためと推測されます。
とにかく当時は建設ラッシュの時代で、とにかく早く建てなければ追いつかない程の賃貸需要があり、建てても建てても需要に追いつかなかった時代だったと聞いていますので、建物は安易的で設計やデザインに力を入れることも少なく、バブル期以前から現役世代だった人々の仕事で建てられたので、今の時代のように先を見越して設計することも無く、ただ単に(過去を標準に)その時現在だけのためにとりあえず急いで建てた建物となってしまったのではないかと思います。
そしてその後の10年ちょっと前からはファミリータイプとしては3DKや大型2LDKが賃貸の主流となっていったので、3DKや2LDKの50u以上の物件なら現在の生活にマッチする設備が、新築時から導入されている建物がほとんどだと思います。
そして『2K』!
ひとり暮らしの部屋探しで「1K」じゃちょっと狭いから、単純にそんなら「2K」が良いかも?
と単純に考えちゃう人もいます。
それもそのハズ!一般的に「2K」物件は「1K」物件よりずっと安いんですから。
『2K』というのは「2DK」より更に更に古い間取りです。
「2DK」時代よりずっと前の時代の産物です。
それはまさに映画「三丁目の夕日」や少年マンガ「巨人の星」の世界です。
今から50年以上前の日本の生活スタイルを、基本にした間取りが「2K」です。
「2K」というのはDK(ダイニングキッチン)というスタイルがまだ一般化する前の日本の家族の生活様式である家族揃ってタタミ部屋の茶の間でチャブ台などのお膳で食事をする時代の間取りなので台所で食事をするなどということは全く考慮されていません。
本当に初期のモノは、まだアパートというモノが無かった時代の貸家タイプ、都心では共同玄関の長屋タイプ、その後昭和30年代〜40年代に渡りアパートタイプへと移って行きました。
※ちなみに2Kの場合はキッチンという言葉も一般化していない時代なので、「お勝手」と呼ばれていました。 (Kはお勝手のK?)
部屋割はタタミ4.5畳+タタミ6畳ですが昭和30年代の主流の『2K』ではお風呂が無いのが普通です。水道は下水道では無く、外に井戸があり、便所は「汲み取り式」でした。
いずれにしても『2K』はその時代に発祥した間取りです。
※↓2Kダイニングは畳にチャブ台が基本です。
ですから、「2K」という間取りのモノは賃貸物件のなかでも最も古い間取りの一つなので設備や内装も古くなり、家賃は1Kの2倍の広さでも賃料は1Kよりずっと安く設定されているものも当然です。
今でも 『2K』 のオール和室の賃貸物件では、古い中釜式のお風呂(エントツあり)に和式トイレなどの仕様のまま「昭和博物館」的な状態で貸し出されているものが存在しています。
そうした、基本的には当時の仕様のままで貸し出している物件は今ネット上でもいっぱい募集されています。
当然にそれらは、『1K』より安かったりしていますが当然です。
どんなに古くても一応は現代的な仕様となっている「1K」と比べて一般的に「2K」は↓のような古い建物仕様となります。
その後、(昭和50年代後半)高度成長期時代に入り、ダイニングキッチンという概念が一般化してきて
「2DK」という間取りの誕生となりました。
平成22年NHKで放送された「ブラタモリ高島平編」で、
東京高島平の公団が、日本で初めての「2DK」だと紹介されていました。
時代としては「東京オリンピック」後、「大阪万博」の直後くらいと思います。
しかし、民間住宅に「DK」という概念が馴染むのにはまだまだ先の話だったのです。
また、その後の好景気の時代には、ファミリ向ーけに「3DK」が生まれ、それをベースに「2LDK」や3LDKなどが誕生して行きました。
ですから、「2K」はあるけど「3K」という間取りは基本的にはありません。
※補足:上記は全体としての一般論であって、ごく稀に敷地の状況から仕方なく2Kや3Kとして建てられる物件はあります。
ここまで述べて来たように、
ファミリー賃貸物件の間取りは、
日本の高度成長期と西洋化を歩んだ歴史そのもの
なのです。
その時代、その時代の価値観や経済環境などによって建てられてゆき、そして今も現役賃貸物件として残っているのです。
今ある賃貸間取りの違いは、年代の違いとも言えるのです。
だから、新しい「1K」よりも「2K」の方が遥かに安いのは当然ですし、「2LDK」物件よりも「3DK」物件の方が古い時代の建物なので安いのです。
年代が違うという事は、設備はもちろん、内装や外装の仕様も全てが古くなるのです。
『2K』(昭和30年代)〜『2DK』(昭和45年〜)〜
『3DK』(昭和55年〜)〜『2LDK』(平成8年〜)〜『1LDK』
と賃貸の間取りの違いは時代の違いとも言えるのです。
しかし、現在も現役である昭和の物件が住むに値しないか?と聞かれたら間違いなくノーと言えます。
恐らく若い人でも日本人のDNAに刻まれている感性が目覚めて、意外と心地よく感じられることがあると思います。
個人的にずっと想うのは、現代日本人の住生活は、西洋化が中途半端であることからまだまだ確立されていないように思います。
アメリカの海外ドラマのように本格的に西洋化をするとLDKが物凄く広くなりますが、一般的な日本人にはまだまだ馴染んでいるとは言えませんし、おそらく今後も日本人の生活はそんな生活にはならないでしょう。
現在は、残念ながら、戦後60年間の中で一番幼稚な時代かも知れません。
戦後一気に西洋化が進み60年を経てもまだ、賃貸住宅においても分譲住宅においても、さらにローコスト化が進み、見せかけ重視となっています。
そして、一般消費者も不動産や建物・インテリアについては、昔以上に興味を失い何が本質的に良いモノなのかのかが判らずに、「とりあえず新らしければ良し」としてしまう本物志向からどんどん退化して行く傾向に思えて仕方ありません。
現在はカップル以上の家族構成では、
「2LDK」が最も現代的で人気のある間取りとなっています。
(※次のページでは「LDK」を取り上げています。)